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(文末にクイズがあります)
Vol.105-2
足部の構造と機能
第3回:足を支える「足部コア」
― Foot Core System ―
瓜谷大輔
・畿央大学大学院健康科学研究科教授
・理学療法士
・医学博士
前回は、足部機能の低下と膝痛や腰痛、転倒リスクの増大などの健康トラブルとの関係について解説しました。
では、私たちの足はどのような仕組みによってその機能を保ち、日常動作を支えているのでしょうか。
本稿では、近年注目されている足部コア、「Foot Core System(フット・コア・システム)」の概念を中心に、足部の安定性を支える構造と機能の役割について詳しく解説します。
足にも「コア」があるという考え方
腰痛の予防や治療を目的とした体幹トレーニングの普及により、「コア(Core)」という言葉が広く知られるようになりました。
コアとは、身体の中心部を安定させ、効率的な動作を可能にする機構を指します。
同様の考え方を足部に適用したものが、Foot Core Systemです。
この概念は、足部の安定性を理解するための新しい枠組みとして注目されています(McKeon et al., 2015)。
Foot Core Systemでは足部を機能的な半球状のドーム(Functional half dome)に見立てて捉え(図1)、この構造が保たれるための足部の安定性を、①静的支持機構、②動的支持機構、③神経機構という3つの要素の相互作用によって説明します(図2)。
(McKeon, et al. Br J Sports Med.2015.を基に作成)
図1.足部の“Functional half dome"
足部を機能的な半球状の構造に見立てている
(McKeon, et al. Br J Sports Med.2015.を基に作成)
図2.Foot core systemの構成要素
足部の正常な機能は静的支持機構、動的支持機構、神経機構が 三位一体となって成立する。
静的支持機構:構造が生む安定性
静的支持機構とは、骨配列、関節構造、靱帯、足底腱膜といった受動的な構造要素による支持を指します。
第1回でご紹介した足部アーチはその代表例であり、内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチが立体的に組み合わさることで、体重支持と衝撃吸収を可能にしています。
足底腱膜は歩行の蹴り出し局面で、足趾の背屈に伴い緊張し、アーチ剛性を高めます。
これは第1回でご紹介したウインドラス機構の働きです。
ウインドラス機構により、足部は「柔らかい支持台」から「硬いテコ」へと変化し、効率的な前方への推進を可能にします。
一方この仕組みが破綻すると、蹴り出し時に効率よく推進力を産み出すことができなくなります。
これらの構造は、安静時にも足部の形態を保持し、立位や歩行の基盤となります。
しかし、静的支持機構は加齢や靱帯の伸張、長期の不活動によって脆弱化しやすく、それだけでは十分な安定性を保てません。
動的支持機構:足部内在筋の役割
動的支持機構は、筋・腱の活動によって産み出される支持機構です。
特に重要なのが、足部内在筋です。
足部内在筋は起始・停止が足部内に存在し、足趾や足部アーチを直接制御します(図3)。
これに対して、筋の起始・停止が足関節をまたいで存在する筋を足部外在筋と言います。
図3.足部内在筋
※図では足部内在筋の表層を足底側から見ている。
※足部内在筋の起始·停止は足部に存在し、足関節をまたがない
これらの筋は、足部アーチの保持や、立位・歩行中の微細な姿勢調整に関与します。
特に足部内在筋が適切に機能することで、足部は歩行時の柔軟性と剛性を状況に応じて切り替えることが可能となります。
足部の柔軟性は接地時の荷重時の衝撃吸収やエネルギー保存に寄与し、剛性は蹴り出し時の安定した支持基盤を形成し、しっかりとした前方への推進力を産み出します。
神経機構:足は「感覚器官」である
Foot Core System の3つ目の要素が神経機構です。足底、関節包、靱帯、筋・腱には多くの感覚受容器が存在し、接地圧、関節位置、筋張力といった情報を中枢神経系へ送っています。
足部は、外界と身体をつなぐ最大の感覚入力部位の一つといえます。
筋の大きさが小さな足部内在筋はわずかな筋の長さの変化も鋭敏に感知することができ、運動器としてだけでなく、感覚器としての働きも持ち合わせていると言えます。
足部内在筋は関節包や靱帯のように受動的に感覚情報を入力する器官と違って、トレーニングによってその感受性を高めることができると考えられています。
この感覚情報は、姿勢制御やバランス調整に不可欠です。感覚入力が低下すると、筋活動のタイミングや強さの調整が遅れ、結果として不安定な立位や歩行につながります。
支持機構の破綻
先行研究では、足部内在筋の疲労や筋力低下がアーチ高の低下と関連することが示されています(Headlee et al., 2008)。
このことは、足部内在筋がアーチを能動的に支える重要な役割を担っていることを裏付けています。また外反母趾を有する者は加齢とともに足部内在筋の1つである母趾外転筋(図3)の筋量が減少していることが報告されています(Aiyer A et al., 2015)。
足部内在筋の筋力低下や靱帯の弱化が生じると、荷重時に足部の横アーチが崩れて平坦化する、開帳足という状態を呈することもあります(図4)。
このように足部の支持機構の機能の低下と足部の形態や機能の変化が関係していることが分かります。
(丸山仁司編,評価から治療手技の選択,p316を参照)
図4.開帳足
※足部内在筋の筋力低下や中足骨間の靭帯の弱化等により、荷重時に足部が平坦化する。
足部コアを意識した健康指導へ
Foot Core System の視点に立つと、足部の安定性は「筋力」だけでなく、「構造」と「感覚」の統合によって成り立っていることが理解できます。
健康指導や介護予防の現場では、単に筋を鍛えるだけでなく、足底感覚への刺激や、足部を意識した立位・歩行練習を取り入れることが重要です。
足部は、年齢に関わらず機能改善が期待できる部位です。
足部コアを意識した介入は、転倒予防や運動機能維持の基盤となります。
これらのことを踏まえ、次回は具体的な足部のトレーニング方法について紹介いたします。
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