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(文末にクイズがあります)

Vol.104-2 
足部の構造と機能

第2回:足の衰えと健康トラブル
― 足の衰えと痛みや転倒の関連―

瓜谷大輔
・畿央大学大学院健康科学研究科教授
・理学療法士
・医学博士

前回は、足部の構造と役割について解説し、足部が歩行や姿勢制御の出発点となる「全身の土台」であることを解説いたしました。
今回は、足部の形態変化や機能低下と膝や腰の痛み、転倒などの健康に関するトラブルとの関係について解説いたします。

足部に生じる「静かな衰え」

手指は常に私たちの視界の中にあり、日常の様々な場面で使う機会があります。
そのため、手指に痛みや変形、機能低下が生じた場合、私たちはそれにすぐに気づくことができます。
一方で足部や足趾についてはどうでしょうか?皆さんは日常的に足部や足趾に意識を向ける機会があるでしょうか? 

足部の機能低下は、加齢や運動不足、靴の影響、既往障害などによって徐々に進行します。

代表的な変化として、足部内側縦アーチの低下、足趾・足部・足関節周囲筋の筋力低下、足趾の変形、関節可動域の減少などが挙げられます(図1)。
これらは必ずしも痛みを伴わないため、本人が気づかないまま進行していることも多くみられます。 

図1. 足部の変化

足部と膝関節の力学的つながり

足部と膝関節の運動学・力学は相互に影響し合う関係にあります。
例えば、内側縦アーチの低下(扁平足傾向)は、足部の支持性を低下させ、歩行時の足部の荷重分布を変化させます。
足部で生じた小さな変化は “運動連鎖”によって、膝関節へ影響を及ぼします。
過度な扁平足では、歩行立脚期(歩行動作において足部が接地している期間)に下腿内旋が増大しやすく、これに伴って膝関節内側への圧縮ストレスが増加します(Nester et al., 2000)(図2)。
この力学的変化は、膝関節軟骨の退行変性(組織や構造の不可逆的な劣化)に関連する要因の一つと考えられています。

我々の研究では、変形性膝関節症患者では扁平足の程度が強いほど、歩行立脚期の前半に膝関節内側の圧迫力が有意に大きいことを示しました(Kubo, Uritani et al., 2022)。

この結果は、足部形態が膝関節の力学的ストレスに関連することを示唆しています。

図2.

①足部内側縦アーチが崩れて扁平足になることで
②下腿の内旋が増大しやすくなり 
③膝関節内側の圧縮ストレスが増加する

足部機能低下と腰痛との関連

足部の形態や動き方は、腰痛と関係することがあります。
たとえば、土踏まずの部分が低い「扁平足」や、歩くときに荷重された足が内側へ崩れるような状態を呈する「過回内」があると、運動連鎖によって膝関節、股関節、骨盤の動きにも影響し、結果として腰にかかる負担が変化する可能性があります。 

海外の大規模研究では足部形態や機能と腰痛との関連が報告されており(Menzら, 2013)、足部・足関節の形態の変化や可動性の問題が慢性腰痛と関係する可能性も示されています(O’Learyら, 2013)。

また、過回内を呈する腰痛有症者を対象にした研究では、足底板の使用によって短期的に腰痛やそれに伴う生活上の支障が軽減したことが報告されています(Castro-Méndezら, 2013)。 

このように、足は地面と接する身体の土台であり、歩行や姿勢を通じて腰の状態にも影響を及ぼすことがあります。

ただし、腰痛の原因は一つではなく、体幹の筋力や柔軟性、日常生活での不良姿勢や腰部への負担を大きくする動作など多くの要因が関わります。
そのため、足部の形態や機能だけで腰痛を判断するのではなく、全身の動きや日常生活での負担を含めて総合的に考えることが大切です。 

足趾機能と転倒との関連

足部機能の中でも、介護予防の観点から特に重要なのが足趾機能です。
足趾は立位時に支持基底面(体重を支えるために必要な底面)(図3)を拡大し、重心動揺に対して姿勢の微調整を行う役割を担っています。

図3. 

支持基底面(赤線で囲まれた範囲)は足趾への荷重分だけ拡大する

高齢者を対象とした研究では、足趾屈筋力(足趾を曲げる力)が良好なほどバランス能力や歩行能力は良好であることが報告されています(Menz et al., 2005)。
また、転倒経験者では、非転倒者と比較して足趾屈筋力、足関節可動性、足底感覚が有意に低下していることが報告されています(Mickle et al., 2009)。 

我々の研究では、足趾屈筋力が強い人ほどTimed Up and Go Test(図4)の所要時間が短く、移動能力が高いことが明らかになりました(Uritani et al., 2016)。

Timed Up and Go Testでは立ち上がる際の前方への重心移動を支えたり、速く歩いたりするために足趾の機能が必要になります。 

これらの知見は、立ち上がりや移動の際に起こる転倒の背景に、足趾屈筋力の低下が関係していることを示唆しています。

図4. Timed Up and Go Test

椅子から3m先のポールまでできるだけ早く歩いて折り返し、再び椅子に座るまでの時間を測定する。

足部に目を向けることが介護予防の鍵となる

足部の衰えは、膝痛や腰痛、転倒を介して日常生活動作を制限し、要介護状態への移行リスクを高めます。
しかし一方で、足部は評価と介入によって機能改善が期待できる部位でもあります。
健康指導や運動指導の現場において、足部形態、足趾屈筋力、足底感覚に目を向けることは、運動プログラムの質を高め、より効果的な介護予防につながります。

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