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(文末にクイズがあります)

Vol.103-2 足部の構造と機能

第1回:足は「全身の土台」― 足部の構造と役割を知る―

瓜谷大輔
・畿央大学大学院健康科学研究科教授
・理学療法士
・医学博士

私たちは日常生活の中で、立つ、歩く、方向転換をするといった動作を無意識のうちに繰り返しています。そのすべての動作において、地面と直接接しているのは足部のみです。
健康体力づくりや介護予防を考える際、筋力やバランス、心肺機能に目が向きやすい一方で、「足部」そのものに十分な注意が払われていないことは少なくありません。
しかし、足部は全身運動の出発点であり、身体機能を支える「土台」といえる存在です。

ヒトは二足直立歩行を行う唯一の動物であり、足部は体重支持と移動という二つの役割を同時に担っています。
歩行や立位において足部で生じた力学的ストレスや感覚情報は、下腿、膝関節、股関節、体幹へと連鎖的に伝達され、全身の運動制御に影響を及ぼします。
足部から上位にある部位へと関節の肢位や運動が連鎖していくので、上行性運動連鎖と呼ばれます。
足部と膝関節のアライメント(肢位)や運動が相互依存関係にあることは、バイオメカニクス研究においても数多く報告されています(Lafortune et al., 1994)。

足部構造の複雑性と機能分担

足部は、26個以上の骨、33の関節、100を超える靱帯、そして内在筋・外在筋からなる多数の筋群によって構成されており、人体の中でも最も複雑な構造をもつ部位の一つです(図1)。
この構造的複雑性こそが、足部に高い適応能力を与えています。

臨床的には、足部は前足部・中足部・後足部に区分して理解されます(図1)。
歩行動作において足部が接地している期間を立脚期、足が空中で前方へ振り出されている期間を遊脚期と呼びます。
前足部は立脚期後半において身体を支持し、推進力を生み出す役割を担います。中足部は可動性が小さく、足部全体の剛性(硬さ)を高めることで安定した支持基盤を形成します。
一方、後足部は可動性が高く、着地時の衝撃吸収や、足部で生じた運動を膝関節~股関節へ伝達する調整機能を果たします。
このように、歩行中には各部位が状況に応じて役割を切り替えながら機能しています。

足部アーチと力学的役割

足部の代表的な特徴が、内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチからなる立体的なアーチ構造です(図2)。
これらのアーチは、骨配列だけでなく、靱帯、筋、足底腱膜が協調して形成され、荷重時の衝撃吸収やエネルギー保存に寄与します。

特に歩行の蹴り出し局面では、足趾の伸展に伴って足底腱膜の緊張が高まり、アーチを上げ、足部の剛性を増加させる「ウインドラス機構」が働くことで、効率的な推進が可能となります(図3)。

アーチ構造の低下は、足部局所の問題にとどまらず、下肢全体のアライメント変化を引き起こします。
我々の研究では、変形性膝関節症患者では扁平足の程度が強いほど、立脚期の初期における膝関節内側の圧迫力が増大することが示されており、膝関節に加わるストレスの増加につながる可能性があります(Kubo, Uritani et al., 2022)。 

足は「感覚器官」としての役割も担う

足部は運動器であると同時に、非常に重要な感覚器官でもあります。私たちが立ったり歩いたりできるのは、筋力だけでなく、「足で感じ取る力」によって支えられているのです。
 
足底の皮膚には、床の硬さや凹凸、滑りやすさを感じ取るための触覚受容器が豊富に存在します。

また、足関節や足趾の関節包、靱帯、筋や腱の内部には、関節の位置や動き、筋の伸びや張力を感知する固有受容器と呼ばれるセンサーが備わっています。
これらの感覚受容器は、「今、足がどこにあり、どのような状態で床に接しているか」という情報を常に中枢神経系へ送っています。 

この感覚情報は、姿勢制御やバランス調整に不可欠です。

足部からの感覚入力が低下すると、バランス能力の低下や「つまずきやすさ」につながります。高齢者では足底の感覚低下がバランス能力や転倒リスクと関連することが報告されています(Menz et al., 2005)。 

このように、足部は単なる「体重を支える部分」ではなく、身体全体の動きを調整するための情報を提供する感覚器官として、日常動作や安全な移動を支えています。

健康体力づくりや介護予防を考えるうえでは、足部を「鍛える」だけでなく、「感じる力を保つ・高める」という視点も重要になります。 

足趾機能とバランス・移動能力

足部の構造のなかで近年、足趾への注目が高まっています。
足趾は、立位や歩行時に身体の安定性を高める重要な役割を担っています。
身体は常にわずかに揺れていますが、足趾が床をつかむように働くことで、姿勢の安定が保たれます。
高齢者を対象とした研究では、足趾屈筋力(足趾を曲げる力)は年齢や体格とは独立して、バランス能力や歩行能力と関連することが報告されています(Menz et al., 2005)。
足趾筋力が低下すると、立位保持や方向転換が不安定になりやすく、転倒リスクの増大につながります。
したがって、足趾機能は「歩く力」や安全な移動を支える基盤的要素といえます。我々の研究では、日本人女性を対象とした研究において、足趾屈筋力が低いほど変形性膝関節症を有する可能性が高いことを明らかにしました(Uritani et al., 2017)。

足を理解することが健康指導の基盤となる

足部は加齢や生活習慣の影響を受けやすい一方で、適切な評価と介入によって機能改善が期待できる部位でもあります。
健康体力づくりや介護予防の現場において、足部の構造と役割を正しく理解することは、転倒予防や運動機能維持を考えるうえで欠かせません。 

次回は、足部の衰えがどのように膝痛、腰痛、転倒リスク等の増大につながるのかについて、より具体的なエビデンスを基に解説します。 

参考文献】 
Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System. 3rd ed. 2017. 
Lafortune MA, et al. J Biomech. 1994. 
Menz HB, et al. Age Ageing. 2005. 
Kubo M, Uritani D, et al. BMC Musculoskeletal Disorders. 2022. 
Uritani D, et al. PLoS One. 2017. 

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